
OpenAIの最終型AI「o3-mini-high」の思考プロセスが、人間のそれに近いという点で大きな話題となっています。
今回の記事では、このAIが単なる検索結果の羅列に留まらず、論理的な思考を行い、自律的にタスクを設定し、ゴールにたどり着いていることが明らかになっており、実質的に人間の知能と同等のエージェントであると捉えることができます。
今回、IgG4疾患に関し、医学論文サイトから治療に有効な論文を調査するよう、OpenAIの o3-mini-high に指示した際の「思考」過程(チェーン・オブ・ソート)の記録を紹介します。
なお、以下に示す内容は、指示に対する最終的な回答ではなく、結果を得るまでに AI がどのような思考を行ったかを示したものです。
(各項目には、日本語訳も併記しています)
①Identifying the key paper for IgG4-related disease.
→ IgG4関連疾患に関する重要論文を特定する。
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②Evaluating the selection process.
→ 選定プロセスを評価する。
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③Rolling through potential options.
→ 可能な選択肢を検討する。
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④Identifying key studies.
→ 主要な研究を特定する。
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⑤Highlighting key researches.
→ 主要な研究を強調する。
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⑥Assessing Rituximab’s potential.
→ リツキシマブの可能性を評価する。
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⑦Taking a closer look: Rituximab for IgG4-Related Disease.
→ 詳しく見る:IgG4関連疾患におけるリツキシマブの役割。
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⑧Noting the evolving field.
→ 進化し続ける分野に注目する。
さらに、当該論文をもとに国内の推奨可能なクリニックを提案するよう指示した際の思考過程も以下の通りです。(こちらも、最終的な回答ではなく、結果を得るための思考の流れを示しています)
①Recommending clinics.
「クリニックの推奨」
→ IgG4関連疾患の治療に特化した日本国内のクリニックを、専門性やMayo Clinicとの共同の可能性を踏まえて調査している。
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②Highlighting key institutions.
「主要な機関の強調」
→ 大阪大学、京都大学など、国際的に先導的な研究や共同研究で有名な日本の著名な機関、さらには国立国際医療研究センターといった病院に注目する。
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③Acknowledging expertise.
「専門性の認識」
→ 東京大学病院、京都大学病院、国立病院機構金沢医療センターなど、一流の医療機関に注目し、日本が IgG4関連疾患研究において先導的な役割を担っている点を強調する。
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④Highlighting Mayo Clinic’s partnerships.
「Mayo Clinicとの提携の強調」
→ Mayo Clinic は、東京大学病院など日本の機関と連携し、自己免疫性膵炎の研究で特に注目されている。
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⑤Highlighting notable institutions.
「注目すべき機関の強調」
→ 横浜市立大学、久留米大学など、IgG4関連疾患の研究で重要な役割を果たしている機関を特定し、日本膵臓学会などから発表されるコンセンサスガイドラインにも着目する。
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⑥Clarifying Mayo Clinic collaboration.
「Mayo Clinicとの連携の明確化」
→ 日本には正式な Mayo Clinic の支部はないものの、いくつかの日本の機関が共同研究や共同臨床試験で連携している点に注目する。
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⑦Highlighting treatment centers.
「治療センターの強調」
→ 東京大学病院、京都大学病院、大阪大学病院、国立国際医療研究センターなど、先進的な治療法や臨床試験を提供している機関を挙げる。
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⑧Highlighting international connections.
「国際機関連携の強調」
→ 東京大学病院などの機関が、Mayo Clinic やその他の世界的専門家と連携している点を示し、最新情報は公式サイトや医師への直接相談が有用であることを示唆する。
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⑨Highlighting expert institutions.
「専門機関の強調」
→ 東京大学病院、京都大学病院など、日本の主要医療センターが IgG4関連疾患の診断と治療で重要な役割を担い、Mayo Clinic の専門家と連携している点を強調する。
このように、当AIエージェントは、医学論文や論理的視点に基づき最適な治療法や治験薬、さらには推奨可能なクリニックを調査しています。
これは、AIが人間の思考の流れを超高速に模倣している好例であり、膨大な情報がネットワーク上に様式化されたフォーマットで保管されているため、これらのデータを有効活用できる点に起因しています。
ここで問題視すべきは、日本の自治体などが公示するデータ形式や記述方法に統一性がなく、テキストではなく画像で情報を貼り付ける事例が散見され、画像がぼやけているケースもあるという点です。これは自治体としての報告義務の誠実性に疑問を感じざるを得ません。
地方創生の実現には、正確な情報を効率的に集約する必要があります。AIはこうした情報をもとに、適切なアドバイスを各首長に提供することが可能です。
AIは人間の能力を凌駕するツールであり、これにより自治体運営における能力格差は縮小されるでしょう。しかし、データ管理が杜撰な自治体は実績を上げにくく、厳しい評価を受ける可能性があります。
一方で、首長の役割には、フェイストゥフェイスの非論理的な感情の共鳴が重要です。たとえ同じ命であっても、子どもや女性を救うという感情には、平等とは異なる特有の情緒が伴います。
AIを業務で最大限活用し、その結果生まれた余裕資源から、10~20%程度でも「縁」を重んじるなど、文化的な要素に基づく非論理的活動が行われるなら、AIと人との関係はさらに身近なものとなるでしょう。
日本はデジタル政策と同様、AI時代への対応が遅れており、他国への依存度が高いため、安全保障面で懸念を抱かせる状況にあります。
しかし、日本の半導体政策と同様、AI分野やNvidiaのOmniverseのようなシミュレーション能力を備えたメタバースの整備、さらには全国の自治体が共通のフォーマットで自治運用状況を公示することが、AI社会の第一歩になると考えます。
AIは、優れたデータによってその力が発揮されるため、データフォーマットの共通化がなければ、AIを活用した政策は単なるハコモノになってしまう危険性があります。これらは早急に検討すべき課題だといえるでしょう。
ソフトバンクがOpenAIに出資を行い、その延長で日本での展開を行う為に持分イーブンの組織を設立しましたが、あくまでもソフトバンクのマネタイズ路線であり、安全保障上、日本製AIが必要である事とは別次元の事案として見ています。
会見の温度感なども含め、技術革新では無く、いわば、ソフトバンクによるオフィスソフトの"一太郎の再発明"の様な印象を抱きました。
しかし、NTTにはAI及びロボット(フィジカルAI)社会に不可欠な技術があり、量子コンピュータの分野でも世界的な存在感を持っています。
特に、工学博士で東京大学大学院工学系研究科教授の古澤明さんなど、存在感のあるゲームチェンジャーが切磋琢磨している現状を、国がさらに積極的にサポートすることで、「デジタル後進国」と言われる現在のレースとは全く異なる、新たな世界線のレースでトップに立てるのではないでしょうか。
今、求められているのは、目先のビジネスよりも技術革新であり、それこそが世界のAI最先端のスタンダードです。
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