一般社団法人 日本メタバース機構
メタバースの現状
メタバースの概念は、60年代に心理学者ティモシー・リアリーによって提唱されたサイバー空間への移住の概念や、80年代のSF小説「スノウクラッシュ」および「ニューロマンサー」における仮想空間の表現にそのルーツを持ちます。 特に「スノウクラッシュ」では、メタバースという用語が初めて登場し、その基本的な枠組みが描かれました。
2003年には、まだSNSの波が押し寄せる前に、セカンドライフというメタバースが誕生し、大きな話題となりました。 日本でも、後を追うようにソニーがPlayStation Homeなどの仮想空間プラットフォームを展開し、メタバースの可能性を探求していました。
セカンドライフから約20年後の今日、ヘッドマウントディスプレイやSNSの3D化などの技術的進歩がありながらも、 日本における現在のメタバースの概念は20年前と比較して大きな進化を見せていないと感じられます。 むしろ、多様なプラットフォームとデバイスの登場により、メタバースの解釈の幅が広がりすぎ、その本質が曖昧になってしまっています。 これにより、メタバースの目的や方向性に対する議論が散漫となり、その議論の質と速度が低下しています。
この状況を解決するために私たち日本メタバース機構では『メタアース』という新しい定義を加え、 メタバースの指向性を明確化し、その重要性の認知を拡めることが有益と考えます。 特に、AIはメタバースにおいて驚異的な能力を発揮します。 そのため、AI以前のメタバースとAI以降のメタバースという切り分けは重要な分岐点とされます。
メタバースはビデオゲームや娯楽の一部のように捕らえられがちですが、 私たちが定義するメタアースはChat GPTを遥かに超える社会そのものを変革するものであり、 インターネットを超える新たなツールとなります。
メタアース: 「超・地球」というメタバースの明確な役割
メタアースは、メタバースの解釈と可能性、及び社会実装力を明確にする新しい概念です。
これは完全なバーチャル空間ではなく、現実の街や都市が再現された仮想世界の中に現実世界の情報がシンクロし、 流動的な連携を築き、現実の情報が拡張される新たな社会のプラットフォームとなります。
このプラットフォームは、様々なバーチャルワールド的なメタバースへの門戸となり、 メタアースはそれぞれの仮想空間のコアとなり、一つの広大な情報と交流のエコシステムを形成します。 そして、現実とデジタルの間の双方向の学習と成長のサイクルを促進し、個人と社会の進化を加速します。 また、メタアース内では、生成AIが世界中の学術論文やデータベースを探索し、 新しい素材や工業製品の発明を加速させます。これは新たな創造のサイクルとなります。
ここで重要なのは、個人のデジタルの拡張体、パーソナルAI(PAI)による物理的な能力の拡張です。 PAIは物理的存在の人間をソースとしたデジタルクローンであり、その意図、知識、そして価値を理解し反映する能力を持ちます。 ソースの行動と経験などの新たな情報はメタアースと連動し、 パーソナルAI(PAI)によって拾い上げ、その能力が拡張されます。
また、PAIはメタアース内で自律的に独自の探求と学習を行い、 新しい知識と経験を獲得します。 その学習と成果は周期的にソースにインストールされ、 知識と能力を拡張します。これは新たな知覚拡張のサイクルとなります。
この知覚の拡張と創造のサイクルによって、メタアースは、現実世界と仮想世界の間の連携を強化し、 知識の創造、技術の発展、そして個人とコミュニティの連携を通じて、 未来の新しい可能性と展望を開きます。 そして、現実世界の課題解決と仮想世界での探求を結びつけ、 人間と技術の相互依存関係を再定義し、私たちの生活と社会に実装されます。
この新しい創造のサイクルを生むメタアースの有用性は明確であるものの、 従来のインターネットやビッグデータを遥かに凌駕する規模のメガデータの拠点となるプラットフォームであり、 日本の経済安全保障や安全保障に重要な影響を与える可能性があります。 そのため、クラウドサービスと同様に純国産化を進める必要があると考えています。
すでに私たちのメタアースという定義に該当するプロジェクトは、 企業の動向から世界中で開発競争が行われていると考えられ、 日本はクラウドと同様に周回遅れの様相を示しています。 世界企業の時価総額ランキングの上位7位はテクノロジー企業であり、 こうしたイノベーティブな取り組みへの遅れが日本の成長へ影を落とすことが考えられ、 産官学による積極的な取り組みが急務と考えています。
一般社団法人 日本メタバース機構
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